忍者ブログ
更新やお知らせなど。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『亜州黄龍伝奇』



「ビンセント、今度の休みはいつ?」
「お休みですか?・・・すぐにでも」
 世界一の黄龍馬鹿、ならぬ秋生馬鹿。休みなんて当分先の先であることに思い当たった青龍は今すぐにでも休日にしようと本気で思っていた。
「別にすぐでなくても、今度の土曜日は?」
「大丈夫ですよ」
 たとえ廖が大丈夫で無いと肩をがっくり落とそうともスイッチオンした青龍を止めることは出来ない。
「良かった。じゃぁ買い物に付き合ってくれるかな?」
「お買い物ですか。もちろんです」
 日頃、何かが欲しいと強請ることなどほとんど無い秋生の頼み。(何しろ言う前に何もかもをビンセントが揃えてしまう)家だろうが土地だろうが、何でもこい。どんと来い。
「良かった。それじゃ土曜日の10時に」
「畏まりました」
 仰せのままに、と青龍は頷いた。





 約束の日。
 秋生がビンセントのところに行こうとエレベーターを降りたところで、ビンセントが立っていた。
「お迎えにあがりました」
「あ、ありがと」
 ちょっと寝坊した秋生は誤魔化すように頬をかいた。
「それで本日はどちらに?」
「えーと・・・中環に。頼んでたのが出来たって連絡があったから」
「何か注文されていたのですか?」
「うん」
 秋生は頷き、ビンセントにエスコートされるまま車に乗った。この扱いにも慣れて違和感を感じなくなってきている。
「何を頼まれたのですか?」
「んー・・着いてからのお楽しみかな」
 知りたいのは山々だったが、秋生が楽しそうなのでビンセントは我慢した。
「あ、あそこの店」
 秋生が指差したのは、普段秋生が近づきそうにないブランドショップだった。
 それほど秋生の興味を引いた何かがあったのか。そのブランドが気に入ったというのならば、これから購入する品々はそのブランドで揃えてもいい…脳裏でビンセントは色々と算段する。
 店専用の駐車場に車を停め、秋生とビンセントは連れ立って店内に入る。
 きょろきょろと店内を見渡した秋生は、一人の店員と目を合わせた。店員も秋生と顔見知りだったのか、笑顔を浮かべて近づいてきた。
「お待ちしておりました、ミスター工藤」
「連絡いただいたので・・・」
「はい。ご用意できております。こちらにどうぞ」
 心得たように店員は秋生とビンセントを奥の部屋へと案内する。
 椅子を促され、腰をかける。慣れない秋生は居心地悪そうだが、こういう対応に慣れているビンセントはさすが堂に入っている。どちらが連れなのかわからない。
「お待たせ致しました。こちらでお間違え無いですか?」
 過剰包装ぎみな箱から開けて見えたものは、眼鏡だった。秋生の視力は矯正は必要なかったはずだが…もしや何か変調がとビンセントは俄かに心配になってくる。
「間違いないです。良かった・・・うん。イメージ通り」
 秋生は眼鏡を取り上げると、ビンセントに向かってかざしてみせた。
「どう?」
「・・・お似合いかと」
 秋生には少し固すぎる気もするが、イメージチェンジと言うのならば問題ないだろう。
「嫌だな、ビンセント。僕じゃないよ」
 秋生ではない。では何だというのだ。
「ビンセントに。日頃の感謝をこめてね。お世話になってるから」
 衝撃的事実に、ビンセントは息を呑み、目を瞠った。

「クリスマスプレゼント」



 しばらくビンセントは上機嫌で過ごし、気味悪がられたとか。
 


PR
Comment
Name
Title
Mail
URL
Color
Emoji Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Comment
Pass   コメント編集用パスワード
 管理人のみ閲覧
Trackback
トラックバックURL:
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新CM
[06/30 雪月花桜]
[03/05 雪月花桜]
[01/22 雪月花桜]
[01/09 雪月花桜]
[03/20 通りすがって立ち止まったもの]
最新TB
プロフィール
HN:
mikado
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
Copyright ©  -- 日々徒然 --  All Rights Reserved
Designed by CriCri Material by 妙の宴
powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]